きみがためをしからざりしいのちさへ

アイドルと媒体 個人的所感

キスマイbusaiku⁉︎の話

突然だが、筆者は現在大学生である。筆者自身は嵐にはじまりKAT-TUN、キスマイ、最近はジャニーズJr.にまで風呂敷を広げつつあるジャニーズ好き(より正確に言うとジャニーズに限ったわけではなくアイドル好き)であるが、当然同級生には全員名前を言えるジャニーズグループはSMAPしかいないという人も多いし、ジャニーズアイドルは嫌いだと公言する人も多い。それが普通だし誰でも自分に興味のないことを延々と話されるのは嫌なものなので、筆者が普段自分から「普通の」同級生とジャニーズの話をすることはない。会話の流れでジャニーズアイドルの名前が出ても黙っているか当たり障りのないコメントをするかどちらかである。それは前述のように相手が興味を持っていない話題を続けるのは気が引けるという理由もあるし、ジャニーズ好きな、いわゆる「ジャニヲタ」である我々と「普通の」同級生とではジャニーズアイドルの楽しみ方が根本的に違うと思っているからだ。最近のSNSの発達によって、リアルの友達にジャニヲタがいなくても感動や興奮を共有できるということもある。

そういう訳で、大学では基本的にジャニーズの話をしていなかった筆者であるが、最近「普通の」同級生の間であるジャニーズアイドルの冠番組名をよく聞くようになった。フジテレビ系列で木曜深夜に絶賛放送中の(と、ここでさりげなくステマをかましておく)「キスマイbusaiku⁉︎」である。

説明するまでもないと思うが、「キスマイbusaiku⁉︎」はキスマイのメンバーが様々なシチュエーション(たいていの場合「女性がキュンとする」テーマ)に沿って自身で構成を考えて演技をするバラエテイ番組である。「一般女性百人」によるコメントも特徴的である。
レギュラー放送が始まってから1年8ヶ月ほど経つこの番組だが、今筆者の周りの女子大生の間で大人気である。ジャニーズに興味がないというゴリゴリのロックファンの子が毎週録画していたのには驚いた。ジャニーズ別に好きじゃないけど、キスブサ面白いよね、という子がとても多い。近ごろは「先週の壁ドン見た?」などという会話が「普通の」同級生の間で交わされているほどである。ジャニヲタを表明していない筆者としては毎度リアクションに困るところである。

同級生たちと話していると、どうも彼女たちの楽しみ方はふた通りあるようである。一つは、「キュンとするシチュエーション」を楽しむ人。壁ドンや車庫入れなど少女漫画のようなシチュエーションをアイドルがするのだから、それを見たいと思う人も多いだろう。しかし、「普通の」同級生、例えばゴリゴリのロックファンの彼女にウケているのはもう一つの楽しみ方である。それは「ランキング下位のVTRとそれに入る一般女性によるツッコミを見るのが楽しみ」という人だ。番組的には「ブサイク」とされる映像の部分が楽しみ!と彼女たちは言う。「昨日のあれ見た⁉︎」と言いながら思い出し笑いをする彼女たちを見ていると、これはバラエティ番組冥利につきるだろうなあ、という気がする。

「キスマイbusaiku⁉︎」を最も面白くしているものは、メンバーの個性と「一般女性100人によるコメント」である。このコメントがあることで、「キスマイbusaiku⁉︎」は見られることを強く意識した番組になっている。時に辛口で絶妙なコメントによって一般視聴者の視点を入れ惹きつける、他のジャニーズ冠番組とは違う魅力を持った番組だからこそこんなに「普通の」同級生にウケているのだろう。

このような、笑わせるのではなく笑われてウケを取るやり方は今までのジャニーズアイドルのやり方とは全く違うものである。「笑われる」タレントはいても「笑われる」アイドルはどうなのか、アイドル好きとしては疑問が残るところでもある。この疑問に対する答えを筆者は先日発売されたシングル「Thank youじゃん」に見た思いだが、その所感についてはまたの機会に述べることにする。